国立新美術館で開催中の美術展です。
気になって行ってきました。
6枚の連作タペストリー。
それぞれ、五感、そして、「我が唯一の望み」というテーマを持っています。
長く、古城の壁を飾っていましたが、ジョルジュ・サンドの目に留まり、
それをきっかけに、中世フランス美術の至宝とされるようになったようです。
タイトル通り、貴婦人と一角獣が描かれています。
一角獣の対には、獅子がいます。
獅子、タイトルから外れて、かわいそうです。
ただ、確かに、一角獣に比べると、かなりぞんざいな描き方ですね。
連作ですが、6枚の完成度には、かなりバラつきがあります。
下絵を描いた人は同じだけど、工房がちょっと違うとか、織り手チームが
違うとか、なにかありそうな気がします。
もともとの織り手の技術の違いなのか、500年という時間が経過したせいなのか、
貴婦人たちの顔つきはかなり怪しく、私の目にハッキリ「美人」と映るのは、
『聴覚』だけでした。
織り上げていく根気を考えると、途方もない作品なのですが、
表情も探りにくく、同じ意匠の動物たち……たとえば、うさぎを比べても、
タペストリーによって、かなりニュアンスが変わってきてしまうため、
これで、何かの謎解きをするのは、非常に難しいと感じました。
なにか謎があるにしても、それは、その時代の符牒だったように
感じたのです。
織り手によって、デッサンがだいぶ狂っていますし。
しかし、ものすごく研究されていますよね。
動物の数や配置などから、何かを読み解こうとした人たちが
たくさんいたことが伝わってくる展示でした。
特に、「一角獣の子供」は、すごいと思いました。
なんだかわからないですよ。あれだけじゃ。
研究者なのか、持ち主なのか、どなたかが定義なさったのでしょうが、
一角獣の子供だと気づいたとき、うれしかったでしょうねえ。
個人的には、とにかく、うさぎです。
うさぎ、うさぎ、うさぎ、ものすごいインパクトできます。
そして、パイプオルガンの飾りの獅子と一角獣もかわいかったです。
動物がなんだか非常にかわいいのです。
全体に、少女趣味な構成ですよね。
そして、当時の流行や風俗の資料として展示されていた
聖人像が、めっちゃ怖いんですよ。塔つきの聖女です。
聖女? うそでしょ? 完全に、魔女でしょ???
ぞくぞくして、慌てて離れました。めっちゃ、怖い!!!
面白かったですが、見に行く前の
「なんだかわからないけれど、コレは見ておきたい!」衝動は、
まったく、満たされませんでした。
タペストリーは、私には、何も語ってくれませんでした。
私には、なんの謎も見つけられませんでした。
ま、こういうこともありますな。
もし、これからご覧になるのでしたら、単眼鏡などがあると
いいかもしれません。双眼鏡でも、もちろん。
デジタル映像で、拡大して見られるのですが、本物で確かめたい
じゃないですか!
でも、高い場所にある図柄は、どうしても遠いですし、
作品保護のために、照明は少々絞っていますから、
「あーん、もうちょっとちゃんと見たい!」になります。
映像は、クリアです。
でも、それで確認するのじゃ、本物いりませんよね?
美術館も、単眼鏡やオペラグラスの貸し出しをやればいいのにと
思います。高価な品ですから、劇場のように保証金とって。
普通の人は、そんなもの持っていませんから、需要あると思うんです。
私ですか? 観劇が趣味だった時期があるので、オペラグラスは
持っています。が、きょうは、「持っていこう」って思っていたのに、
まんまと忘れました。上のほうにいる見つめあううさぎとか、
戦おうとしている鳥とか、ちゃんと見たかったです。
魅惑のタペストリー、魅了されたかったです。