立ち戻る。

友人は、一度離れた場所へ戻ってきました。
それは、演劇の世界で、昨日はその公演日でした。
素直に、よかったねと思いました。

久しぶりに読んだハヤカワ文庫のミステリーが「なんだよ、それ」って、私的にはハズレだったので、
ちょっと不機嫌だったのですけれど、そんな感覚も、ついぞ忘れて久しかったと気づいて笑ってしまいました。

いつからでしょう。本が読めなくなったのは。
いつからでしょう。劇場に行かなくてもいいと思えるようになったのは。

スマホで無料の漫画は読めるのに、小説は読む気にならない。
仕事で必要に駆られて買う何冊かの今どきの書籍、ノウハウ本だったり、自己啓発だったり、
映画の原作本だったり様々ですが。あとは、掲載誌くらい? やはり仕事で必要なので、コスメ雑誌は
目を通しています。よくお仕事をいただく雑誌も、マメに買います。

昨日、井上ひさしさんの世界に触れて、「よく出来ているけれど、今じゃない」と感じました。
かといって、成功した小劇団の作品には、まったく心が動きません。

ならば、私の今は、どこにあるのでしょうか?

たまに、昔の戯曲を読みたくなります。
『私はシャーリーバレンタイン』、『マザー・マザー・マザー』、『グリーンベンチ』、読み返してみたいのに、怖くて手が出せません。何が怖いのでしょう? あの頃には戻れないと知ること? 案外、同じ場所にいるかもしれないのに?

先月の終わりに人に連れて行っていただいた古書店には、幻想文学のコーナーがあって、そこで買い求めたのは、300円になっていた澁澤龍彦『黒魔術の手帖』でした。
そういう扉も、日常に追われるうちにパタンと閉めて、それっきりになっていて。

夢がかなっても、その先にあるのは、パーフェクトな世界ではなく、現実が待っています。
もう「めでたしめでたし」の先に、新しい苦労や調整があることを私たちは知ってしまって、だから、昔ほど無邪気に夢は見られなくなってしまって。

このパラパラした感覚を整理しちゃうと、ちょっともったいないので、モヤッとさせたままにしておこうと思います。
とりあえず、今は、お友達に「本当によかったね」とだけ。
自分のことのように嬉しいよ。「おかえり」。また、始めましょう。

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