映画7/100「シュガーラッシュ オンライン」

テーマはいいけど、対象年齢と合わなくない?

シンデレラ、ガラスの靴! まじか?

追記。

ゲームキャラクターであるヴァネロペとラルフ。お菓子の国のレーサーであるヴァネロペは、現状に退屈しています。一方、ラルフはかつて一世を風靡したゲームの悪役。ヴァネロペとの出会いで、孤独から解放され、今の暮らしを大事に考えています。

刺激を求めるヴァネロペのために、ラルフが楽しみを用意します。が、それは、ヴァネロペが住む世界、お菓子の国のレーシングゲームを停止させる結果に終わります。

ヴァネロペは、レーシングゲームの世界を取り返すために、インターネットへ飛び出します。

というのが、ストーリーの骨子。

インターネットの世界を視覚化し、最初は便利さ、楽しさを謳い、怖さ、危なさにつなげていく手法は、素晴らしい。

インターネットの流れで、ディズニーワールドにスライドさせ、さながらディズニーランドにいるかのように、スターウォーズやら、マーベラスやら、ディズニープリンセスやらを登場させるあたりも、お見事!

しかし、ストーリーが展開する過程において、プリンセスたちは、自虐に走り、プリンセスをプリンセスにしたらしめているアイテムさえ、自ら叩き割ります。

やがて、アンダーグラウンドなレースゲームのラスボス、シャンクが現れ、見かけの怖さ、悪っぽさの裏にある仲間への愛、プロ意識がリスペクトされる仕掛けに移ります。

で、ヴァネロペってば、このアンダーグラウンドのなんでもありに、魅せられてしまうわけ。

あげく、お菓子の国のレースを捨てます。私がいなくても、誰も気づかない、と。

前半は、「危ない」「危険」とされたアンダーグランドなレースフィールドも、やがて、「コードを書いてもらったから」、再起動が可能になります。

もういろいろ、「はあ?」で。

ラルフは、大親友ヴァネロペのために、お菓子の国のレースを取り戻すべく、体を張り、見事に目的を達成します。が、せっかく世界を取り戻し、ゲームセンターに帰れると思ったら、ヴァネロペの心は、新しい世界に向いていました。彼女を魅了する新しい世界をスローダウンさせ、興味を失わせようとしますが、やり過ぎてしまい、インターネット全体を揺るがすトラブルを引き起こします。

親友でも、道が分かれる時が来る。そのときは、送ってあげて。離れても、親友だから。

テーマは、ね、素晴らしい。

が、責任が皆無なんですよね。

シュガーラッシュという世界の中での役割を自分勝手に放棄し、アンダーグラウンドなレースに転身していくヴァネロペ。自由と刺激、コードがない前半は、ミスったら、消滅の危機を背負い、それが、自由の代償だったのに、後半は、再起動への備えもバッチリというわけ。

クールで、クレバーなシャンクすら、ヴァネロペが責任と役割を放棄している事実を指摘しません。

メーカーが倒産し、パーツの交換が困難なシュガーラッシュは、やがて、交換が出来なくなくなるでしょう。滅びゆく旧世界、時代の推移につれ、やがて消えていく危険性が高いのに、我らがプリンセス・ヴァネロペは、目先の変化と刺激を求め、懐かしい世界、自らの居場所を捨てます。

安いチャレンジ、イージーな転身。やがて、また、飽きがくるでしょう。シャンクのゲームは、シャンクのもの。紛れ込んだヴァネロペは、主役には、なれませんから。

親友との別離を受け入れたラルフは、リハビリをし、現実に対応していきます。喪失からの再生は、アメリカが抱えるテーマのひとつで、ディズニーらしい観客総ざらいのフックです。

自由と刺激、それを求めるなら、ケジメが必要ではないかと。ただ、私のやりたいことは、これじゃない!で、飛び出すのは、子供のすること。

プリンセスたちは、ドレスを脱ぎ捨て、カジュアルファッションを楽しみます。ガラスの靴は、叩き割られ、王子様を待ち、従う古き生き方は、否定されます。

が、プリンセスたちがやっているのは、ディズニーワールドのキャスト。ただのエンタメ、おもてなしです。王子に背を向け、城を捨て、ガラスの靴を叩き割り、自立したのはいいけど、居場所は、大部屋の楽屋と触れ合いステージ?

新しい刺激と自由を求め、懐かしい世界を捨て、親しい人に寂しさを強要し、リセットの効く毎日を選択?

かっこ悪くない?

脱いでしまったアイドルみたいに、もう魅せるもの、なくない?

どうするのかしら? このかっこ悪さ!

プリンセスたちに、新しい物語をプレゼントする?

ヴァネロペは、シリーズ3作目で、滅びゆくシュガーラッシュの世界を救うために立ち上がる? あるいは、シャンクのレースにも、飽きて次を探す?

友達なら、友達の夢を応援するべき。これは、正しい。が、友達なら、友達の間違いを指摘するべき、じゃないかな?

要は「ないものねだりのワガママVS執着」の話なんだけど、執着は醜悪と声高に糾弾され、ワガママはスルーされ、自立と美化されていきます。

あなたをあなたたらしめる要素、んな、簡単に捨てていいの? ガラスの靴も、お菓子の国のレースも、壊すのは、一瞬。失ったら、消えてしまう。破壊と否定の先に、なにをつかむの? いまどきディズニープリンセスよ。

自虐&自立の果ては、ファンふれあいアトラクションと大部屋楽屋。自由を求めて、再起動可能な新しいフィールド。

闇があります。本当は怖いシュガーラッシュ。

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2019年1月10日 | カテゴリー : 日々のこと | 投稿者 : 章月綾乃