2025映画16『未完成の映画』

舞台は中国、コロナ禍の中、映画を作ろうとした人たちを描いた作品。
設定がフィクション、ここにリアルな当時の動画が織り込まれていきます。
ちょっと気になって、公開初日に見に行きました。角川シネマ有楽町へ。

作中、ずっとすすり泣きが聞こえ、「あれー、そういう演出? そういう音響にこだわった劇場じゃないはずだけどなー?」で?になりながら見ました。

見終わって、拍手が起こり、これにも戸惑います。
そこまでの作品だったかしら?

あとから、事情がわかります。やけに中国人っぽい人が多いと思ったら、観客の8、9割が中国の人だったんですって。なるほどー!

日本のコロナ禍しか体験していない私からすると、「わー、閉塞感が蘇ってつらいなあ」くらいなのですが、中国では、この作品は上映許可が下りない、また、作中に登場する動画も、どんどん消されている状態なのだそうです。

登場人物の気持ちの推移も、街の風景もそれほど日本と変わりなく見えるのに、
国の在り方が全然違うんですよね。なるほど。

だから、中国のコロナ禍を体験した人たちにとっては、消されてしまった「あの頃」が蘇り、すすり泣く、よく作ってくれた、みたいな感じになるみたい。

個人的な感想は、中国の人たちのいよいよの時の音楽って、K-POPじゃないんだなってこと。昔ながらの中国っぽい音楽が盛りあげていきます(昭和のころ、日本にも入ってきたっぽいやつ。ごめん、全然伝わらないかも)。

フィクションパートが、非常に長く感じてしまい……。
ご家族に会えないのつらいよね……とか、
「へえ、3分の黙祷タイムがあったのか」とか、多くの人が感動するあたりで、演出過剰に感じてしまって。
なんというか、「ここ、フィクションパートだよな」とか、「ああ、これ、セリフは、後から足されているのかー」で冷静に見ちゃってね。

物語の中盤、武漢の人が差別されます。
世界中で、中国人が、そのとばっちりで、アジア系が忌避された時期がありますが、国内的には武漢かーで、改めて気づかされました。

だから、日本のコロナ禍しか体験していない人が見た時に、
すすり泣きまでいけるかどうかは、ちょっと怪しい気がしますが。
少々過剰に思える演出、仕掛けも、必要なのかもしれないし、その辺りはよくわからない。

あとは、制限解除の時に、施設をぶっ壊していくわけ。暴徒、というほどじゃないけれど、普通の市民が。
ああ、ベルリンの壁なんかと同じで、憎むべき対象なんだよなあで。
でも、日本人は壊さない気がするんですよね。器物破損で捕まるのが怖いから。
ああいうときに、壊せるお国柄と、壊さないお国柄があるのかもしれません。
でも、日本分断みたいなことが起こったら、わかんないですよね。
箱根の関所みたいところをぶっ壊すかもしれない。いや、ないかなー?

それも、心に残りました。ロウ・イエ監督の『天安門、恋人たち』は見てみたいなと思いました。

映画『未完成の映画』公式サイト

2025年映画
1.劇映画 孤独のグルメ 2.アーサーズ・ウイスキー3.ショウタイムセブン4.デヴィッド・テナント&クシュ・ジャンボ『マクベス』5.ANORA アノーラ6.F1ow 7.名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN8.アンジーのBARで逢いましょう9.教皇選挙10.BETTER MAN/ベター・マン11.白雪姫12.アマチュア13. ウィキッド ふたりの魔女14.シンシン SING SING15.マインクラフト/ザ・ムービー16.未完成の映画

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2025年5月4日 | カテゴリー : 日々のこと | 投稿者 : 章月綾乃