土佐光吉没後400年記念 源氏絵と伊勢絵 描かれた恋物語

和歌文化が、仕事として私の人生に割り込んできたせいでしょうか?

これは、見ておきたいと思いました。
「源氏絵と伊勢絵」、きょうまでの企画展です。出光美術館でやっています。

金色の美術展です。
王朝の恋物語の絵巻物。
これまでは、正直、どれを見ても、ピンとこなくて、「ああ、あんなのね」で、
ずっと流してきました。が、改めて、見てみると、いろいろな発見があって、
非常に面白かったです。

特に、独特の構図。
渡り廊下と、部屋が描かれ、やんごとなき方々のお姿が描かれ……、
あのありがちなやつです。
でも、あれも、改めて考えてみると、すごい構図ですよね。
視点が天空にあるわけですから。
そんなところから、のぞけるはずもないのに、一体全体、誰が
最初に考えたのでしょう?

バカをさらすようで、やめておけって気もしますが、
もう少し続けますと、浮世絵も、よくわからないのです。
ただ、一枚だけ、「やられた」と思ったものはあります。
今はなきルイス・C・ティファニー美術館にあった浮世絵
コレクションの一枚です。
手前に、馬のお尻。相当アップです。で、遠景に、
なにか街並みがあったような???
あの構図を見たときに、大笑いしまして。
海を渡ったフランスで、そりゃ、どぎもを抜くよねって
思いました。馬のお尻に驚きすぎて、絵師の名前も
覚えていないのですが。
ルイス・C・ティファニー美術館は、本当にうっとりするような
美術館でした。箱根あたりにあったら、きっと人気スポットで、
永続したでしょうに。
地元の反発、こじれた感情も、さんざん聞かされましたけれど、
それでも、あれだけの空間、コレクション、本当に惜しいと思います。
私はもう一度、『鹿の窓』を見てみたいのですが、
次はないのかしら?

というわけで、意識は欧米に向いていまして、
日本の美術全般に弱いわけですが。
もうちょっと続けましょう。
今回の出光での企画展は、最後に「留守模様」コーナーが
用意されていました。
これが、まあ、美しく。深く、心に残ります。
見る人が見れば、道具立てだけで、「ああ、あの話のあのシーン」が
わかるわけです。
私? わからない、わからない(笑)。
しかし、非常に素敵でした。
酒井抱一は、おそらく、今年二回目の鑑賞で、やはり一回目のほうが
インパクトがありました。ただ、展示空間が広いため、横を歩くと、
さながら、自分が八ッ橋を渡っているような気分になれて
いいですね。

美術を読み解くには、教養や知識が必要ですよね。
ずいぶん前に、ダ・ヴィンチコードがはやりましたし、
鏡リュウジ氏もよくエッセイなどに書かれていますが、
本当に意匠を読み取ってこその鑑賞となります。
犬が忠誠を表すとか、花の意味とか、
絵画に織り込まれたものを読み取っていく力があると、
ものすごく楽しいものになりますよね。

そういう意味では、この前の
『貴婦人と一角獣』は、状態がいい昔のものが
きちんと残っていたというだけで、そこに象意は、
あまりないように見えたのですが。
たくさんの人が研究され、秘密があると考えて、
未だに謎が解けないわけで。

芸術新潮の関連記事を図書館で読んでみたのですが、
私も「本当に五感がテーマだろうか?」に賛成です。
五感を暗示させるなら、もっとハッキリと打ち出すだろうと
感じるのです。
また、これは新国立美術館の素晴らしい展示で理解が出来たのですが、
同じ意匠を繰り返しつかうこと、特に、うさぎがわかりやすいのですが、
6枚のタピスリの出来栄え、完成度にムラがあります。
同じデザインなのに、あまりにも、ニュアンスが変わってしまうのです。
そんな深い秘密を隠すなら、当代1の織物師を確保して、全編仕上げさせる
気もしなくはないのですが。
私が冨と名誉とありあまるお金と、そして、一族の秘密をかかえ、それを
織物にしたいと考える貴族なら、そのあたり、きちんと注文をつけます。
同じうさぎが、あれだけ違う顔になるのは、「おいおい、ちゃんとやってくれよ」の
世界ではないかと。獅子はなんだか寸詰まりだったり、一角獣がいきなり
太ったりもしていますから。で、全体に、少女趣味です。
結婚の祝いに用意された説がありますが、むしろ、子供部屋などにふさわしい
デザインじゃないかと思うのです。動物がいっぱい、乙女の純潔を象徴する
一角獣が家紋の入った旗を守って……。

簡単にいえば、「美しい」と思えなかったということかもしれません。
いや、キレイですよ。彩りも鮮やかで、魅力的です。
500年前の織物を今、日本で見られる幸せは感じます。
そこに壮大なロマンも読み取ります。
が、単純に、好みではないってことですよね。
動物たちがすごくかわいくて、グッズ売り場にあったノートは、今、
愛用しています。気に入っているのに、美しくないとは、
これいかに?

で、話がここでやっと源氏絵に戻ってきますが、源氏絵もまた、
少女趣味ですよね。女性好みといいますか。
もしかしたら、私は、もうちょっと力強く、荒々しいものが
好きなのかもしれません。
だから、留守模様、響きました。素敵でした。

源氏絵を見て、「ああ、あの場面ね!」と思えるくらい、
もう少し基礎知識をつけないといけないと感じました。
わからないまま、近々サントリー美術館にも行こうと思っています。

 

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