今年初めて、能楽堂へ行きました。
前回の観世会の能楽講座は皆勤賞だったのですが、今年は父の死もあって、時間の流れが変、
もう「第四回」で、微妙に寂しい気持ちになりました。
もっとも行く前は「行くって言っちゃったけれど、調子が悪いなー。しんどいなー」でございました。
前日、丸一日外に出ていたので、メールもたまっていて、そこから片付けまして。
少し寝てみたら、かなりギリギリの時間ででも、ディフュ展はむりやりのぞきました。
渋谷が苦手なんですよね。なんか気が荒くて。
あと、道行く人とテンポが合いません。
「なんでタラタラ歩いているのだ?」と自分もたいして早くないくせに思います。
おそらく、マイペースで歩けないのがイヤなんでしょうね。
一昨日、ちょっと面白い話を聞きました。
「今の日本の空気、戦争前とすごく似ているんですって」
キナくさいなー。
なので、道行く若者たちをそういう目で見てみましたよ。
キャッチしているコとか、ね。
「あなたは、戦える?」って。
野性的でギラギラした人なんて、皆無ですね。顔が温和ですもの。
でも、いざとなったら、戦うかもしれません。戦うかもしれないけれど、
きっとそれは、相当追い込まれてからのことでしょう。
友達とかいっぱいやられて、もう自分が戦うしかないって気づいて、
それから「うわわわわー」って反撃しそう。反撃して、撃退はできるけれど、
でも、タイミングとしては、相当遅くて……みたいなストーリーが浮かびました。
藤原竜也くんあたりが主演しそうなサバイバル系漫画のパターンですが、おそらく
現実もあんな感じでしょう。
今の若い人は、違うものと戦っていますからね。
大人が全然、若い世代を大事にしていなくて。
でも、我が子だけは溺愛していて、そこに歪みがあって。
おっと、「龍田 移神楽」でした。
ゲストの千田稔先生によると、龍田は特別な場所だったそうです。
龍田山があり、大和川が流れていて、その北側に龍田大社があって……。西には、三室山。
龍田の神様が降臨なさった場所だそうです。
龍田越えという言葉があるように、別れの場であり、そこを越えて故郷に戻る場所だったと。
うーん、口の説明だけだと、すごくつらい。行ったことがない、知識がない場所をうまく想像できません。
万葉集には、龍田川(大和川)は出てこなくて、龍田山が登場するそうですよ。
龍田の神様は、もともとは風の神様。志那都比古神(シナツヒコノコノカミ)、志那都比売神(シナツヒメノカミ)。
シナは、息が長いの意味。風のこと。
その後、延喜式のころには、天御柱、国御柱となって、神様の在り方が変わっていくそうです。
三室、みむろの「むろ」は、後世の解釈では、室内とか洞窟とかになりますが、本来はもろ、
つまり、杜のことだそうです。チラッと先生、古代朝鮮とのつながりもおっしゃっていたけれど、
そこ、もうちょっと聞きたかったです。
司会進行役の松岡心平先生によると、能の「龍田」には、美しい紅葉、そして、龍田姫のイメージの
背景に、天逆鉾(アメノサカホコ)があるんだそうです。
天逆鉾とは、日本創世にまつわる神話、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)が、混沌の中から
淡路島を生み出した国生みの物語に出てくる神具です。
最近、神様から遠ざかっているので、もうこの辺りで頭がグルグルしてきまして(笑)。
でも、サカホコが、「鉾」を逆さにしたものだというところに、ん?とひっかかったりしたわけです。
人を殺すための武器である鉾が、逆さに使われて、国を成している……と。
「逆さ」には、弱いのです。
事代主神の「天の逆手(アマノサカテ)」が気になって、わざわざ美保神社まで
青柴垣(アオフシガキ)神事を見に行っちゃうモノズキですから。私は。
天逆鉾が能の「龍田」に登場するのは、風の神はイザナギ、イザナミの子供で、縁が深い神様であること。
また、持統天皇のころは、吉野の大峰山が高天原だったからではないかという説明がありました。
でなければ、持統天皇の吉野行幸の回数の説明がつかないと。なるほど。
大峰山にあった高天原を葛城、金剛山に移したのが、役行者であり、葛城修験道だろうという考察で、
そこで、もともとは立田だった土地に、修験道の龍のイメージがついたのではないかというお話でした。
氷の中の紅葉、八という数字など、いろいろなキーワードがあるんですって。
物語の中で、巫女がお坊さんを強く止めるところ、女神の舞なのに強吟で謡われるところも珍しいそうです。
で、「龍田」は、観世流にしかない移神楽(ウツリカグラ)という形で9月7日に見ることが出来まして。
移神楽は、通常の型とは違って、三段から中之舞、キリへという形が、五段舞われるとのこと。
女神だから狂うというのは適切ではないけれど、非常に土俗的なものになっていくそうです。ふむ。
キリの中にある「ゆうつけどり」は、祓いなんですねー。
わからないから、そのままにしちゃいますが、それではいけないと。
かつて世の中が乱れたときに、ニワトリに木綿をつけて、都の四方で放って祓いをしたと。
でも、ダメです。松岡先生がボソッとつぶやいた「ニワトリタツタ」で検索をかけると、
竜田揚げのレシピしか出ません。ああ、これが現実です。
第五回の観世会能楽講座は、10月1日(水)18時30分から。
「井筒 物著」だそうです。
久しぶりに、頭の中に日本神話と能楽が戻ってきた一日でした。
なお、聞き取りで書いたものなので間違いがありましたら、ご指摘ください。よろしくお願いいたします。