映画9『パラレルワールド・ラブストーリー』

平行世界の話では、ありませんでした。
どっちが「本当か」は、わりとすぐにわかってしまって。
なぜ、そうなっているのかがわからない間、しばらくイライラします。
途中、「ああ(低音)」があり、そこから結構退屈……という。

ただ、わりとこの映画、私は高く評価します。

それは、玉森裕太さんのリアリティがすごいなって思ったからです。

いけすかないイケメン、傲岸で不遜、友達ヅラしているけれど、
見下している……、あたりが非常にうまく、その後、壊れている
感じも、「ああ、このレベルのイケメンならば、こうだろう」と
妙な納得があるのです。

イケメンのレベルで、壊れ方が違うって、ちょっと何を言っているのか
わからないと思うのですが。まあ、もうひとつ、言えば、玉森さんクラスの
イケメンはあんなみっともない女の口説き方はしないわね。
周囲がチヤホヤするから、本人の中に切羽詰まるものありません。

ヒロインの棒な感じ、えっと吉岡里帆さんが大根っていうんじゃなくてね、
役の設定、素人が演じたら、あんな感じだよねえ……、
そもそも体温が低い役なんだろうなあで。こっちも、ある意味リアル。
紙で出来たお人形みたいな印象なんだけどねー。

ただ、もうちょっと知的なエッセンスがある役設定のほうが、作品の本質に近い気もします。

で、この物語の底辺にあるのは、「嫉妬」なのだと思うのですが。

嫉妬の対象が、ちょっとおかしいんだよねえ。

この物語、この設定、この人物配置ならば、嫉妬の対象は、
女じゃない、研究でしょ?

洋画ならば、間違いなく、研究。

なんで、そこ、すっぽ抜けて、女のやりとりに終始しちゃうのでしょ?
「日本人最年少のノーベル賞候補」の名誉、
恋よりも、もっとひっかかってきますよねえ?
海外の映画ならば、間違いなく、そっちにフォーカスですよ。
なんで、女のケツ追いかけているんだ???

原作を読めば、氷解するかもですが、まあ、読まなくてもいいかなー。
ただ、イケメンの不遜さ、周囲を見下してる感じを存分に味わえたので、
結構、満足しました。玉森さんは、よくやったと思いますよ。
出せないでしょ、普通。アイドルは、そこまでやれない、出来ない。
イメージダウンになるから。

着地も「世界の中心で愛を叫ぶ」あたりから続いている
ジャパニーズ・ロマンチズム。恋愛お花畑映画。
ヒロインも結局、イケメンかよ……な薄っぺらい人物設定で、
ある意味、妙な説得力がありまして。安いレベルでの質感の統一というか。

これ、硬派に作ったら、相当面白いぜ。で、ちょっと引っかかる世界ではあります。ただ、硬派に作ると、たぶん、日本では売れないでしょう。

硬派な場合、嫉妬の対象は、研究。
で、登場人物はみんな、マットサイエンティスト。一見、普通に見えるけれど。
ヒロインは、もうちょっと打算でいい。名誉とか、お金とか、自分の出世とか、
そっちを計算にいれるようなキャラで、男二人に対峙して欲しい。
清楚系、かわいい系ではなく、上昇志向を秘めた感じで。
清楚で、中身が実は野心家でも、もちろん可。

みんな、いい人過ぎるんだな、要は。
ジャパニーズ・ロマンチズム、ちょっと飽きてきたから、
もっと、毒々しく行こうぜ。
女のケツじゃなくて、世界的な名声、世紀の発見を追いかけるスケールで
見たいなあ、コレ。

ジャパニーズ・ロマンチズム、センチメンタルというジャンルがあることに、
改めて気づかせてくれた作品でもあります。ジャンルつーか、モード?
悲恋&運命の恋っぽくやっときゃ、売れるって思ってるよね。

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2019年6月5日 | カテゴリー : 日々のこと | 投稿者 : 章月綾乃