令和映画43『ベニスに死す』

映画館で映画を見ようチャレンジですので、たまにリバイバル名作も入ります。

昨日は、「有名だけど、見てなかったなあ」で見てきました。

『ベニスに死す』
美少年映画で有名な作品ですから、どんだけお耽美なんだろう、それは、
2019年の今、どこまで心に迫るかな?で、ちょいと斜に構えて見に行きました。

らね!

あれ? 美少年を愛でるのではなく、
美少年に魅了されていく初老の教授の乙女っぷりを堪能する仕様でした。

そう来たか!

これは、すごいや。

だって、今でこそ、「乙女っぷりを堪能する」で、作品ニュアンスが伝わりますが、当時は、そんな概念ないでしょう? しかも、あっちこっちに知的攻め、退廃ニュアンスが散りばめられています。

公開が1971年、48年前の作品世界、やっと今、まともに対峙出来る感じですよ。

こんなんぶつけられて、そりゃ、世間は消化不良ですよね。何かすごいことを言われた気がする。でも、それを表現する「乙女っぷり」みたいな言葉はまだない、ないまま、語りたい、言葉がないのに、語りたくなる、で、二次創作的に、様々な文化が生まれたわけですよねえ。そりゃ、大変だわ。

また、冒頭はフェードインでアドリア海があり、生命を運ぶものとして、船やゴンドラが出てきます。さらに、時の隠喩として砂時計が配置され、ピアノの音が時と記憶をつないでいきます。

まったく、どんだけ、しゃれおつなんだよ! 

タジオくんも、2019年の今、見ればね、設定が甘く、荒くて、「うわ、いろいろやらされているな。大変だね」なのですが、当時は、アレが彼のパーソナリティを上書きしちゃったでしょうし、だから、私も、映画を見てないのに、彼のビジュアルは知っていて、今年、ananの心理テストでも、「不機嫌な美青年の挿絵」で、見本にビョルン・アンドレセンの写真をつけて、イラストがそれっぽく上がって来たという経緯もあります。もうある意味、アイコンなんですよね。

きっと撮影時は、「よくわかんないけど、振り向いて見つめろって言うから、みつめた」とか、「指させって言うから、指してみた」くらいでしょ。でも、それが、社会現象を起こし、その後、世の中と彼自身の人生を変えてしまって。

たわむれに調べたら、今、64歳で、もう美少年を愛でる教授の領域なわけですよ。近影もネットに上がっていると聞きましたが、「見ない方がいい」と言われので、余韻が残るうちはやめておきますわ。

64歳から48年を引くと、16歳。撮影時は、だいたい14、5歳でしょうか。

うわー、人生狂ったねえ。でも、あの美貌ですから、まあ、一種の呪いですよね。

邪悪は、芸術の食べ物だみたいな、哲学仕掛けもあるしさー。(天才の食べ物でした! 失礼)

なんというのですかねー。私が20代だったころって、ホント、上の世代が、
めっちゃマウントをかましてきたんですよ。バブルの終わりかけだったので。

「知らないんだ?」的に。「じゃあ、話しても仕方ないね」風に。
今は、知らないは、「調べてない」だけで、「今すぐ調べます」ですが、
30年くらい前は、「知らない」は、無知で罪でした。分別されました。

「ふーん、知らないんだ?」の背景には、ゴダールがあり、
ヴィスコンティがあり、黒澤明がいたりするわけですよ。

まったく! たかが、映画じゃん!!!って今なら言えるけれど、
当時は、「頭に来るなあ。知らなくていいよ!」って反発が先に来てしまい。

だから、今年になって、「気狂いピエロ」、「勝手にしやがれ」で
「虚無と傷心どっちがいい」のモトネタ、コレか!とか、
あのころの文化マウントの裏付けがやっと取れて、くうう!!!です。

会話に入るためのパスポートが映画や音楽だった時代。
今でも、当時のオトナのように話す人たちがたまにいて、
わあ、時代の遺物って思ってしまいますが、まあ、無理もないよね、ゴダールにヴィスコテンィ、クロサワでは…で、これからは寛容に微笑めそうです。

今は、なんなのかなー? どこに才能が集まっているのかな。

そんなことを考えました。

1.名探偵ピカチュウ2.東映まんがまつり3.憶えてる?4.RBG 最強の85才5.初恋 お父さん、チビがいなくなりました6.ホワイト・クロウ7.コレット8.僕たちは希望という名の列車に乗った9.パラレルワールド・ラブストーリー10.アラジン11.ガルヴェストン12.誰もがそれを知っている13.旅のおわり世界のはじまり14.クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅15.メモリーズ・オブ・サマー16.Diner ダイナー17.クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代18.新聞記者19.主戦場20.アマンダと僕21.ニューヨーク最高の訳あり物件22.パピヨン23.天気の子24.ザ・ファブル25.マーウェン26.ペット227.モデル雅子を追う旅28.COLD WAR あの歌、2つの心 29.ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド30.トールキン 旅のはじまり 31.ディリリとパリの時間旅行32.永遠に僕のもの33.やっぱり契約破棄していいですか34.アートのお値段35.マルリラの明日36.SHADOW 影武者 37.ガーンジー島の読書会の秘密38.台風家族39.ワイルド・スピード スーパーコンボ 40.エイス・グレード41.存在のない子供たち42.パリに見出されたピアニスト43.ベニスに死す

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2019年10月1日 | カテゴリー : 日々のこと | 投稿者 : 章月綾乃