「ハンカチをしまって」さん

「ハンカチ、ズボンの前のポケットにしまっていますか?」

唐突に、知らない人にこんなことを言われたら、あなたはどうなさいますか?

「え?」

「ハンカチ! ズボンの前ポケットにしまっていますか?」

その人は二回、同じことを言いました。きっと、大事なことなんでしょう。
普段、私はそうしているのですが、物をだしたり、入れたりしているうちに、声をかけられたときは、ハンカチは鞄にいれていました。

「しまっていないですよ。カバンにあります」といいながら、彼にハンカチを見せました。

明らかにヤバいヒトなのですが、私が丁寧にお相手したのには理由があります。そこは、動く歩道で、前後びっちり人がいたのです。また、非常に、一生懸命な感じがしました。無視はできません。

「それをキレイにたたんで。ズボンの前のポケットにしまって」

えー、この話、どこに行くのでしょう???

「キレイにたたんで!」
ハイ。こんな感じでいい?
不器用なので、「キレイに!って言っているでしょ?」と怒られそうで、ドキドキしました。

「そしたら、ズボンの前のポケットに入れて。ホラ、ズボンの前がたいらになっていい感じでしょう?」

えっと、男性じゃないので、別にズボンの前は、デコボコはしてないんですけれど。うーん、まあ、いいか。
「そうですね」
「携帯もしまって」

えっと、それは、イヤだな。iphone、誤作動起こしかねないぞ?

「携帯も、ズボンの前のポケットにしまってください」
ちょっと、逆らってみましょうか。

「これは、使うのです。だから、今はいいです」
「携帯もしまってください」
「ホームに行ったら、電話をかけたいの。だから、いいんですよ。使い終わったら、しまうから」

やっと、納得してくれたようです。
ホームについても、ずっとくっついているのですが、「ごめんなさい。電話かけたいの」って言ったら、納得してくれたようで。でも、ケガレから逃げるかのように、突然、猛スピードで去っていきました。んな、ダッシュで去らなくてもよいではないかー!!! いや、貼りつかれるのも困りますが。

昔もありました。混雑している山手線の中で、いきなり「どこの学校を出ましたか?」と聞かれ、よくわからないペース、それ聞いてどうするの?の一方的な会話に巻き込まれました。あれも、困りましたねー。だって、車内の人の耳、全部私の答えを聞いているんですもん。

「ハンカチをしまえ」さんも、「どこの学校を出ましたか?」さんも、きっと、心の造りがちょっとだけ規格外なのですね。
うまく、人との距離が取れなくて、取れないけど、知らない人と交流してみたくて、積極的にコミュニケーションを取るように誰かに言われていて。そんな人にとって、私はなんかちょうどいい感じなんでしょうね。何を言っても、自分を傷つけそうに見えないから。まあ、お見立ては正しいです。出来るだけ、合わせます。

しかし、どうするといいんでしょうね? 二度あることは、三度あると聞きますし。
会話のイロハを教えてあげちゃう? いや、「どこの学校を出ましたか」は、「それを聞いてどうするのですか? 違うお話をしませんか?」と軌道修正かけられる気がしますが、「ハンカチをしまって」は、先方は特別にイイコトを教えてくれているつもりですから……、難しいかもしれませんね。

悩ましいところですなー。

しかし、「キレイにたたんだハンカチをズボンの前にしまうと、たいらになっていいでしょ?」って誰かが教えているんですね。まあ、一定の説得力はありますね。ハイ。私はたいらにならなくてもいいのですが、手を拭くのに楽なので、ハンカチ、ズボンの前にしまうようにしていますよ。えへへへ。

 

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