お伊勢参りとオディロン・ルドン~夢の起源~

締切明けの章月、どこへ行くかと思えば、神社文化会の公開講演会です。
なんてマジメなんでしょう!!! 誰も言ってくれないので、自分で
自分に言っております。

テーマは、「お伊勢さまと神道文化」。

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あ、でも、その前に、河鍋暁齋展も再訪しました。
三井記念美術館で、16日までなのです。
時間はなかったのですが、イヤホンガイドを借りました。
説明が入ることで、鑑賞のカンドコロがわかって、
非常に楽しかったです。いつか記念館にも行ってみたいです。

地下鉄とタクシーを飛ばして、國學院大学へ。
いよいよ、お伊勢さまです。

前半は、奈良大学名誉教授の鎌田道隆氏による講演でした。
「江戸のお伊勢参りと旅文化」

俗に「おかげまいり」といいますが、宝永二年、1705年のおかげまいりは、
ちょっと不思議な現象といえるかもしれません。
ということを、鎌田先生のお話で気づきました。

先生のお言葉をそのまま借りれば、「茶摘みをしていた人が、『私も行こう』と
茶摘みを投げ出して、伊勢を目指す」みたいな状況だそうです。
「子守しながら、ご飯を作っている主婦が火をかけたまま、『伊勢に行きたい』で
着の身着のまま出かけちゃって。旦那が『あいつ、財布も持たないで』で、
追いかけていく」そんな図だったとおっしゃいます。

そんなことが成立するのは、伊勢への参道において、
御接待の精神が息づいているからだと。
もてなす心。受け入れる器があったそうです。
同時に、物流でもあり……。

江戸時代は、下級層の人々の家出が多かったらしいですが、その理由に
「伊勢に行きたい」があって、仮に、仕事を放りだして伊勢に行っても、
それは、信心から起っていることだから、怒れないそうです。

まあ、それは、わかる気もします。
わかりにくいのは、「もてなす人々」でしょうか?

四国のお遍路さんのお接待が連想されますが、でも、実体験がないため、
いまひとつ、ピンときません。
鎌田先生は、25年、生徒さんと一緒に伊勢街道を歩かれたそうです。
初期のころ、助けてくださり、そのまま、街道の立ちより場所として
恒例化した一般家庭が、高齢化により、「もうお手伝いできません」と
お断りになったりするそうです。
現代の伊勢参りをする側としては、「せめてトイレだけでも」とお願いしても、
「きちんとしたおもてなしができないから、お断りする」んだそうです。
ここで、時間切れで話が終わってしまったため、それ以上はわからないのですが、
ちょっと面白い話ですよね。
もてなす側の心意気。接待の精神。

後半は、『皇室』の編集長・伊豆野誠氏による『遷宮のツボ』でした。
ざっくり言えば、伊勢のご遷宮についての解説なんですが、
お話の仕方が、「ダテや酔狂で、『皇室』の編集長じゃないなあ」と
いう感じでした。
いや、タダモノじゃないですよ!!!

導入は、神社検定弐級の伊勢ご遷宮の問題からの抜粋です。
「とりあえず、やってみてください」

わかるわけないです。
一般にいらない知識だから!!!

でも、そこで、聴講者に「考えさせる」ことで、聴く姿勢を作ってしまうわけですよ。
勉強していないとわからないことばかりなので、
たとえば、「伊勢ご遷宮における山口祭の『物忌』と呼ばれる童男、童女に関して、
間違っているのはどれ?」みたいなところからくるんですよ。
まず、「山口祭って?」です。
で、「童男、童女は、子供だってことはわかるけど……」で、常識的には終わります。

ちなみに選択肢は、こちら。
1.神様に仕えるために心身を正常に保った童男・童女のことである
2.古より神官の重要な祭儀に奉仕してきた
3.古より旧神領地から1年前に選ばれ、1年間、精進潔斎をして祭りに臨む
4.童男は紫草花模様の「半尻」と呼ばれる装束を、童女は「衵」と呼ばれる装束を着けている

わかるわけないですよねえ? あ、ちなみに正解は、3だそうです。間違っているのは、3ね!

で、「山口祭」とは、「童男」とは……と、説明してくださるのですが。
いやいやいや、説明されても、覚えられないですよぉ。
それに、神職になってご奉仕するなら、絶対に必要な知識ですが、そんなことまで
一般に求めてどうなるのでしょうか??
いや、逆に、マニアック過ぎて知りたくなるのも人情ですが(笑)。

ちなみに、全然知識がない私は、当てられませんでした。
なぜって、島根の美保神社の青柴垣神事の依り代さんたちのことを思い出してしまったせいです。
美保神社は、一年、潔斎するんですよね。
過去にご神事を見学したことがあるのですが、お二人いらした依り代の方のひとりが
完全に違う次元に行かれてしまって……。
素直に、すごいと思いました。
その後、ちょろっと調べた感じだと、毎年、1人は神がかりになるそうです。
ご神事って、本当にすごいと思いました。

あれ、話がズレちゃいましたね。

遷宮のプロセスをスライドで見せてくださるのですが、これがもう
素晴らしいのですよ。神宮の杜の美しさ、清らかさ、そして、
祀りつづける人々の思いが、写真から伝わってきます。
木を育てる人、選ぶ人、運ぶ人、それを、お社にする人、
神様にお移りいただく役目の人、本当にたくさんの人がいないと、
ご遷宮は成り立たないのです。

でも、今、伊勢はものすごーく混んでいるらしいので。
私は来年でいいかなって思っております。
ご縁があれば、うかがうかもしれませんが。
静かなお参りがしたいです。

おもいのほか、早く終わったので、新宿に出ることにしました。
目的は、損保ジャパン東郷清児美術館です。

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来週23日まで、「オディロン・ルドン~夢の起源~」がかかっております。
昨年、三菱一号美術館でもルドン展をやっていましたし、
基本的に、国内のルドン展は、岐阜県美術館なしには成り立たないと聞きますので、
どんなものかなーって思いつつ、うかがいました。

黒の時代の作品は、重複もあるのですが、美術館が違うと見え方も違います。
さらに、ボルドー美術館からの借り入れ作品が、素敵で。

「モルガの海」、そして、絶筆になったといわれる「聖母」にうっとりです。
ルドンには、弱くて。
昔から、それと意識せず、好きな絵のポストカードを買って、それがルドンだったりしていました。

理由はよくわからないし、黒の時代の大半は苦手なのに、でも、好きなものは
バカみたいに好きなんです。
「悲嘆」、「セイレーン」など、もうゾクゾクします。

いつか岐阜県美術館で、所蔵品展を拝見したいです。
そして、願わくば、ボルドーへ!!!
「モルガの海」も、「聖母」も、ボルドー美術館の作品でした。
この先いつかまた、会うことが出来るのでしょうか???
ルドンが一面にダーッと並ぶ展示法、なんともシンプルで、壮観でした。
23日までにもう一度行かれるといいのですが……。どうかしら? 難しいかもしれませんね。
ご興味のある方はぜひ!

相変わらず、知恵熱ライフ、続行中でございます。

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