ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』

気づいた時は、もうチケット発売後で、席とチケット代のバランスがよいところはもうなかったのです。
そこで、もういい!とブチ切れて、VIP席を買いました。
ゲストなし、7列どセンター。30,000円也。

これが、信じられないくらい素晴らしいコンディションのシートになります。
なぜって、5列、6列目のセンターがポッカリ空いていたのです。

完全なる神席に! 過去にこんなに「わー!!!」はなかった気がします。
東急系のシアターは、たいてい前方がフラットなので、舞台は近いけれど、
本当に見づらいんですよ。「端ではなく、センターで見たい」を優先したけれど、まさかのロイヤルシートにバケるとは夢にも思わず。

ショーは、それなりに過去にいろいろ見ているので、別に新鮮味はありません。
ひとり、ロープワークダンスを踊れる男性がいて、この方が全体を引き上げています。それ以外のダンサーさんは、ダンサーというよりも、モデル寄りなんじゃないかなー???

内容は、オープン&フレンドリー、フレンドリー&ポジティブな世界。
ジャンポール・ゴルチエさんは、病まなかった、壊れなかったトップデザイナーさんだったのでしょうね。

一幕は、気づいたら泣いてました。
過去がぐわっと押し寄せてきて。
ああ、寺山修司さんは、こういうのを見せてくれたんだなとか。
蜘蛛女のキスも好きだったな、PPWも大好きだった……みたいに、連想するものがめちゃくちゃあって。
半裸の男性が丸いオブジェを引っ張ってきて、そこでセクシーというよりも猥雑、エロチックというよりも淫靡な三角関係ダンスが行われるのですが、これが本当に美しい。

そう、全体に、「衣装ありき」で作られているから、非常にムダがありません。
あと、BGMは、70年代くらいからのヒットメドレー。
私と同世代の方には、ぶっささると思います。
一番、グッと来たのは、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のワンフレーズかなー? パッと「あ!」って思ったけど、全然違う曲かもしんない。テキトーでごめんね。

あと「僕たちラブラブなの」シーンのシャム双生児みたいなピンクシノワ風女の子たちが本当に素敵でした。髪もドレスもくっついているんですよね。
非常に表現がわかりやすい、ストレート。

で、気づいたら、ハラハラと泣いていました。
私、すごくいいものを見てきたんだなって。過去の自分、封印してきたものがまた宝物のように蘇ってきて。
ジャンポール・ゴルチエさんは、そういうのをちゃんと大事に時系列で記憶している人なんですよね。それは、消費者と作り手の立ち位置の違いかもしれませんが。自分の中にある感性の層みたいなものが、肯定し直されたような面白さがありました。

二幕は、ディスコ文化みたいなオマージュからのランウェイ風ショーアップなのですが、なにしろ、席がよいでしょう? ランウェイをどセンターから見るような得難い体験をして。
非常に配慮された作品なので、リアルタイムで映像が左右のスクリーンに映ります。それは、ファッションショーでよくある構図、よく知らないのに「知っている」例の角度です。

で、圧倒的に、かっこよさは、動画なんですよ。
あれは、服やモデルの良さを最大限に引き出しているんですよね。
あるいは、狙って作っている。デザイナーやモデルたちが。

でも、正面からリアルなキャストを見ると、伝わってくるものはもっと生々しい。

これは、面白かった!
そういうことか! そりゃ、服がヘンテコでも、買っちゃうわ。
場に当てられる、自分もこの世界の一部になりたいと願う、この才能、輝き、美にあやかりたくなる。
ファッション業界って、非常に消耗しそうだなって感じるけれど。
でも、絶対に面白い世界だと、やっとわかったというか。

強気な値段設定で、ちょいと空席が目立つのですが、でも、今回は本当に神様ありがとう!な素晴らしい体験ができました。
ガラ空きの下手側のシート、私の隣に「空いているから見てきていいよ」って言われたっぽいアンダーキャスト風の女の子が二人座ったんだけど、この子たちも謎かわいんですよね。
開演前に自撮りするわ、終演後、左右どっちから出ようかなって思ったら、ブーツを履いているわ。あれ、あなた、脱いでたの? さっき、スタオベどうやってしたの?だったり。まあ、かわいい。ガールズ、キラキラ満載です。

素晴らしいから、絶対見なよ!ではないのですが、
だって、ある程度、ミュージカルやショーを見ていたら、わりと知っている構成だから。でも、服ありきのショーは、本当にムダがない。素晴らしく見栄えがします。ご興味があるなら、滑りこんでもよいと思います。シアターオーブ、4日まで。



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2023年6月1日 | カテゴリー : 日々のこと | 投稿者 : 章月綾乃